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昨年、9月から始まった、首都圏を含むタイ中部に起きた、洪水災害。
10月には首都バンコクに迫る勢いで、水没地区が拡大していきました。その洪水被害の中心でもあったアユタヤにある、マハチュラ・ロンコーン大学は、昨年、京都、花園大学と学術交流の為に提携を結ばれたこともあって、今回、その洪水見舞いも兼ねての訪問となりました。
 
6日午後9時過ぎに降り立った、バンコク国際空港は以前と同じ活気に包まれており、向かったバンコク市内もいつもと変わらぬ人出で、広告塔には煌々と電気が灯り、ショッピングセンターも明るく輝いて見えました。
 
翌朝、早速バンコクの北に位置するアユタヤに向かいました。このアユタヤは3つの川が合流して、それが街を取り囲むようにして流れ、いつもは川からの自然の恩恵を受けて、人々が暮らしております。しかし、今回の大洪水は、その川の氾濫によって、街全体が水没し、街から10数キロ南にある、マハチュラ・ロンコーン大学に市民は避難したのですが、その大学もすぐに水に浸かる事となってしまいました。今回、大学に訪れると、副学長のサワイ師が出迎えてくれ、5年前に完成した大学内を、つぶさに見て廻わる事が出来ました。
 
最初に訪れた西側奥にある寺院は約1mぐらい浸水、地下の瞑想室などは水が入って使えなくなっておりました。次に2棟ある寄宿舎は、1階部分がほとんど水に浸かって、使用不能。2階以上に居住している学生は、ボートで教室棟や食堂棟に出掛けて、避難民の世話などに努めていたという事でした。大講堂は1階部分に水が入り、1階倉庫に保管してあった、書籍などに被害が出ました。こちらは助かった書籍を2階以上に移し、1階部分もきれいになっておりました。教室棟、事務棟、図書棟などは、やはり1階部分が浸水。2か月以上、水に浸かっていたことで、持ち出せなかったほとんどの機材が使用出来なくなっており、合わせて電気関係の機材が地上に設置されていたために、こちらも使用出来なくなっておりました。ただ、食堂棟は2階に電気施設があって、調理機材を急いで2階に上げたことで、被害を免れ、1日2食約1000人から1300人分の食糧を提供し続けました。そして、1階部分は土嚢を積んで、一日中、ポンプで水を汲み出す作業が続いたという事でした。困ったのは、トイレで、教室棟の西側一部と食堂棟のトイレしか、使えないため、多くの人は、ボートに乗ってトイレに出掛けていたようです。
 

mcu_4.jpg mcu_3.jpg 寄宿舎内部の被害 mcu_8.jpg mcu_5.jpg 大講堂二階に避難した書籍類 mcu_7.jpg mcu_2.jpg 海外派遣僧の会議に参加 mcu_1.jpg 会議後、全員で記念撮影 mcu_6_20191113100353830.jpg 副学長サワイ師に義援金をお渡ししました。

今回の大学に押し寄せた洪水は、アユタヤ方面やチャオプラヤー川が氾濫したのではなく、大学の東に位置する、パーサック川が氾濫し、その水が大学に10月12日から15日にかけて押し寄せました。最初の12日は膝まで、13日には腰の辺り、14日には1mから1m50ぐらいまで徐々に増えていったとの事でした。大学の東側から侵水した為、西側は1mぐらいで、東側が2mぐらいの高さまで、約2か月間浸水していたとの事でした。
 
浸水初日、午前中には、シリントーン王女をお迎えして、被災したアユタヤ市民、約1000名を受け入れる式典が行われ、教室棟を開放して、アユタヤ市民を受け入れた途端に、午後から大学にも浸水が始まったとの事でした。
 
大学の近くを走る高速道路には、コンクリートブロックを積み上げて浸水を防いでいたので、高速道路を挟んで大学側は浸水、逆側は乾いている状態であったということで、この高速道路を使って、バンコクや被災していない州から、多くの物資やボランティアも駆けつけて、物心両面からの援助が届き、高速道路からは、軍が用意したボートに乗り換えて、大学構内を巡回し、物資や人を運んでいたとのことです。
これまで工事が進んでいた瞑想棟も、完成時期が明らかになっていませんし、何より、電気設備復旧、機材の拡充が、国からの予算がおりてこない為、まだ、修理しようと考えても、手つかずの場所が多くあるという事で、一日も早い復興を願わずにはいられません。
大学構内に入ってすぐの事務棟と図書館の間に、少し小高くしてある場所に、スリランカから送られた菩提樹の木が植えられております。今回の洪水は大学構内の樹木をほとんど水没させましたが、この木だけは、根元まで押し寄せた水も、この木を水没させることなく、2か月後には水は引いて行ったとのことで、学生やボランティアからも「お釈迦様の奇跡の木」と言われているようです。
 
8日午後にはマハチュラ・ロンコーン大学、バンコク校で開催された、タイ最高仏教サンガ委員、マハチュラ・ロンコーン大学評議員でもある、ラマジィニ師、列席のもと、今年の海外派遣僧の会議に参加させていただきました。こちらも、多くの出席者から、派遣される僧侶は、英語が話せるべきで、そうでないと、結局は派遣先のタイ人との交流にだけになってしまうので、布教と言う点では、意味がないのではないかという意見が出ておりました。広く海外へも布教をするという事、タイの寺院も多数、海外にも存在し、それを守っていかなければならない苦労を肌で感じる事が出来ました。

平成24年2月12日
永明院住職 國友憲昭 九拝